マンション居住者支援信託とは

当事務所が所在する横浜市港北区は、マンションが非常に多いエリアです。事務所もマンションの一室にあり、筆者も近隣のマンション住まいで、そういった土地柄もあり、日頃からマンションや団地(以下、「マンション」とまとめて表記します。)に関するご相談を多くいただきます。

戸建ての土地建物と違い、マンションには「建物の区分所有等に関する法律」(一般的に区分所有法と呼ばれています)という法律や、それぞれのマンションごとに定められた「管理規約」というルールが存在するため、家族信託の対象財産にマンションが含まれる場合は、マンション特有のポイントがあります。

この記事では、マンションを信託する際のポイントについて、司法書士、マンション管理士の資格を持つ筆者が解説いたします。

マンション管理とは

マンションは、区分所有者全員で構成される「管理組合」が主体となって管理を行っています。管理組合は共同生活を行っていく上でのルールを定め、廊下やエレベーター、給排水設備などの建物の共用部分や共有の敷地を適切に維持・管理できるよう活動しています。

区分所有法とは

区分所有法とはマンションや団地などの区分所有建物(それぞれの区分所有者が単独で所有している専有部分がある建物)に関するルールを定めた法律です。正式には「建物の区分所有等に関する法律」という名称で、近年、大幅な見直しが行われ、令和8年4月1日には改正区分所有法が施行されます。この改正では、マンションをはじめとする区分所有建物の高経年化と居住者の高齢化という「2つの老い」が進行している社会情勢を踏まえ、総会決議における多数決要件の見直しや、マンションに特化した財産管理制度の創設などの見直しが行われました。

マンション標準管理規約とは

管理組合は、「管理規約」という共同生活を行っていく上での個別のルールを作成し、そのルールに則って管理組合活動を行っています。国土交通省は、その管理規約について一定のガイドラインを示すために、「マンション標準管理規約」というモデル規約を作成しています。「マンション標準管理規約」は時代のニーズに合わせた改正が行われており、多くの管理組合はそれに倣って管理規約の作成や改正を行っています。

二つの高齢化

1970年代やそれ以前に建設されたマンションは、現在、50年を超える築年数を迎えており、それらのマンションでは、建物の高経年化とともに居住者の高齢化による「二つの高齢化」が進行し、様々な課題が生じてきています。老朽化した建物の修繕、管理組合役員のなり手不足、管理費修繕積立金の滞納、建て替えに向けた合意形成の困難さなど、課題は多岐に渡ります。

二つの財産管理

マンションは、各組合員が個々に所有する専有部分と、組合員全員で共有する共用部分からなり、専有部分はそれぞれの組合員が、共用部分は組合員全員で構成される管理組合が管理します。組合員の高齢化により、専有部分の適切な管理が難しくなってきたり、管理組合の理事のなり手が不足し、管理組合の運営に支障が出てきているケースもあり、専有部分と共用部分の双方の財産管理というマンション独特の課題が生じています。

マンションを信託した場合のメリット

以下に、マンションで家族信託を利用した場合のメリットを挙げます。

①受託者に専有部分の管理を任せられる

信託すると、受託者に専有部分の管理・処分を任せることになるため、受益者は専有部分の修繕等の管理は受託者に任せ、安心してマンションに住むことができます。また、売却する場合も、受託者が単独で契約やその他の手続きを行うことができるため、受益者の負担なく売却することができます。

②受託者が組合員になる

信託すると専有部分の名義は受託者になるため、受託者が管理組合の組合員になります。そのため、管理組合総会の案内をはじめとする管理組合からの書類は受託者宛に届き、総会への出席や議決権行使は受託者が行うことになり、管理組合からの書類に目を通したり、総会に出席するなどといった受益者の負担が軽減されます。

③受託者が役員になることができる

信託すると受託者が組合員になりますので、管理規約の規定によりますが、役員が居住者に限定されるなどの定めがなければ、受託者が役員になり、管理組合運営に積極的に参加することが可能です。

建替え決議に向けての信託の活用

このように、マンションを信託すると受託者が組合員となるため、組合員としての活動はすべて受託者が行うことになります。今後、増加するであろうマンションの建替えに向けての合意形成には長い期間がかかることが予想され、また、建替えへの賛否の判断も容易ではないため、家族信託を利用することで、高齢の区分所有者に代わって、受託者である子世代に、建替えに関する一連の手続きを任せることが可能です。

マンションを信託する場合の注意点

信託財産にマンションが含まれる場合には、以下のような気を付けるべきポイントがあります。

管理組合への届出を行う

マンションを信託することで専有部分の所有者の名義が受託者になり、受託者が組合員になるため、管理組合へ組合員の変更を届け出る必要があります。

管理費・修繕積立金の支払い

組合員である受託者が、管理費・修繕積立金の支払い義務を負いますので、組合員変更の届出とともに、管理費等の支払方法を確認し、必要に応じて、引落口座の変更等を行います。通常、管理費等は信託開始時に相当額の金銭を信託し、そこから支払います。

駐車場やトランクルームなどの利用について

マンションの駐車場やトランクルームは専有部分ではなく、利用者は、共有敷地や共用部分の専用使用権を有している形になるため、信託して組合員が変わると委託者は使用権を失い、もう一度申し込まなければならなくなる可能性があります。駐車場に空きがなく順番待ちの状態ですと継続使用することができない場合もありますので、事前に管理組合に確認するなど、注意が必要です。

受託者の工作物責任

専有部分の登記名義人である受託者は、排水管の水漏れなど専有部分に起因する損害を他人に与えた場合には、その損害に対する責任を負いますので、火災保険等の契約者を受託者に変更する必要があります。

対象不動産に漏れはないか

集会所やポンプ室などが組合員全員の共有という形で登記されているマンションもあります。そのようなマンションを売却する際には、専有部分や敷地権に加えて、共有部分である集会室等の持分も含めて一体として売却する必要があり、それらの持分を見落とし信託の対象財産から漏らしてしまっていると、受託者が信託財産であるマンションを売却しようとしても、売却することができません。また、委託者が死亡して信託が終了し、帰属権利者に帰属する際にも、同じように信託していない共有持分があると、その持分の相続についての遺産分割協議を相続人全員で行う必要があり、財産の承継がスムーズに進まない可能性があります。

信託契約書作成時の注意点

上述のように、マンションを信託する際には特有のポイントがあり、それらに配慮した信託契約書を作成する必要があります。たとえば、以下のようなポイントが挙げられます。

<信託財産の引き渡しに関する条項>

火災保険の名義変更

管理組合への組合員変更の届出

<受託者の権限の条項>

管理費等の信託財産からの支払い

受託者が管理組合の理事に就任することができる(規約によっては不可なので要確認)


以上のように、マンションを信託する際には、特有のポイントがあり、信託設定時にはそれらの注意点への配慮が求められます。

そういったポイントを踏まえた上で、マンションで適切に家族信託を活用することで、受益者の安心安全な居住環境の確保はもとより、受託者が組合員となり管理組合運営に積極的に関与することによって、健全なマンション管理による資産価値の維持とスムーズな専有部分の承継を実現することが可能です。区分所有者の高齢化や建物の老朽化が進んでいる昨今のマンション事情において、家族信託の活用はこれからますます期待されています。

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